自伝以外読む気になれない フィクションに白けるようになって伝記ばかり読んでいます

年を取ってフィクションに興味が持てなくなりました 自伝や伝記ばかり読んでるのでその紹介など

伝説の歌姫と言うタイトルですが、「伝説」なら普通はなかったことにされる都合の悪い出来事が全部書いてある興味深くてほろ苦い本です

作者はこの本を、音楽業界がどれだけ女を憎み蔑んでいるかを示す資料になると思って書いたそうです

確かにこの手の伝記でこんなに主題の人物がバカにされる描写が延々描かれるなんて、珍しいと思いました

帯に並んだ男性陣の名前を見ても、この本を読む人はニコのファンではなく、「有名な男性のミューズとして生きた女」に興味がある人だから、ニコを都合よく美化したりせず本当の事を書いても大丈夫だと筆者が判断したからではないかと私は思いました。

ニコは愚かな行動をとりすぎるし、そのニコを周りが蔑みすぎるので読んでいて相当苦しかったです。歌姫を伝説にする際に普通は取り除かれる都合の悪い事象をこの本は全部描くことにしたのだなと思いました。ニコは嘘つきで愚かで、単なる「かわいそうな虐げられる女」ではなく、周りの人間もそんなニコを好きなだけ馬鹿にする。

この本は「かわいそうな女が頑張る話」でも、「才能のある女が成り上がる話」でもなく、愚かで嘘つきなニコがただひたすらにもがく話で、都合のいい歌姫伝説ではないのでした。

その中にあるわずかな真実や光を探しながら読んでいました。あまりにニコが愚かなので、悪いレイシストが女を差別してる!というテンプレートに当てはめて誰かを断罪して気持ちよくなることはできません。

事実って本当は単純な勧善懲悪物語ではなく、都合の悪いことがいっぱい含まれているのを、誤魔化さずに書いた本だなと思いました。

ちょうど現在安全な場所から石を投げられる楽しい失言狩りイベントが起こっていますが、意識の高い人達が現実の弱者には興味がなく、失言狩りばかりするのは現実の弱者がこんな風に都合の悪い存在だからなんだろうと思いました。

 

 

ニコ―伝説の歌姫